メンバー便り

奄美の地図①   

私達の身の回りには、様々な地図が存在している。地理学を学ぶ者にとっては身近な存在の地図だが、そもそも地図とは何だろうか?座右にある『広辞苑』第6版の「地図」の項には、「地表の諸物体・現象を、一定の約束に従って縮尺し、記号・文字を用いて平面上に表現した図。地形図・海図・行基図など」と記されている。

図1.立体的な地図

図1.立体的な地図(レリーフマップ)
※鹿児島地図センター(徳田屋書店)製作『PEACH MAP 3D』№4「奄美諸島」

辞書には「平面上に表現した図」とあるが、立体的な3Dの地図も存在するため、地図は平面とも限らない。また、行基図とは図2のような日本地図のことである。

図2. 行基図(『拾芥抄』,明暦2・1656年刊)

図2. 行基図(『拾芥抄』,明暦2・1656年刊)
※国立国会図書館デジタルコレクションより

辞書の例にある地形図は、奄美でも大正時代から陸軍の陸地測量部によって作成されており、そこには地形図が作成された当時の地域の景観が描写されている。ちなみに、陸地測量部とは戦前の地図作成機関であり、戦後の地理調査所を経て国土地理院へと改称し、現在に至る。地図のもつ軍事情報としての側面が戦前の作成機関から垣間見える。

地形図には、書店や地図店で市販されている現用の地形図と、開発が行われて変化した部分を修正するために新たな地形図を作成したことで現用ではなくなった地形図とがある。このうち後者は「旧版地形図」と呼ばれ、資料館や図書館などに所蔵されており、一般に閲覧・複写することができる。最近では、自然災害から身を守るために住む土地がどのような地形であったかを知る資料としての価値が注目されており、個人でも国土地理院や地図店などから旧版地形図を購入することができる(詳しくは国土地理院のwebで)。

利用・購入するにあたり、どの時期の地形図が存在するかを知る必要がある。この点については、国土地理院が公開している「図歴」(地形図作成の履歴)を見れば良い。例えば、奄美大島の名瀬の5万分1地形図であれば、次の通り。

図3. 5万分1地形図「名瀬」の図歴

図3. 5万分1地形図「名瀬」の図歴
※国土地理院HPより

 

この図歴を一瞥すると、一寸した違和感を覚える。最も古い地形図は大正9(1920)年の測図であるが、発行年は昭和28(1953)年と33年後のことである。測量は行なったが地形図は発行しないなどという“税金の無駄遣い”を当時の政府はしていたというのだろうか。そんなことは、過去も現在もあって良い訳がない。

図歴に記載されない地形図が存在するとでもいうのか・・・。新たな謎の誕生である。

 

(法文学部人文学科 小林善仁)